kurage__flyの日記

それでも、大人になる

児童養護施設からの大学受験

 今年度の卒園生の高校名と春からの進路が載った紙を見る機会がありました。私はその時初めて知ったのです、4年制大学に進学するのは私だけだと。いろいろな事が繋がっていく感覚になりました。調べて持ってきた奨学金の資料を見せても職員さんが把握していることはまず無い、進学一本ですと宣言してからも何度も就職を選択肢として示される。なるほど、これが現実なのか、と。

①受験料6万円問題 

 私の住んでいた県には「フェアスタート応援事業費」というものがあります。それに含まれる大学等受験料支援費。「2校までとし、6万円。」との記載。進学がスタンダードの高校に在籍していた私からみれば、「6万円でフェアスタートな訳あるかい」とツッコミを入れたくなりました。6万円がはした金では無い事は分かるし、恐らく「共通テスト+国公立前期後期」分なのだろうとは思うのですが、やっぱり足りない。しかも私は施設に来る前から私大コースにいたので受験まで半年を切ったところでの国公立への変更もあまりに非現実的でした。私立大学一般入試は1校35,000円が相場です、私の志望した大学はどこもそうでした。となると1校しか受けられないのです。しかもその話を最初に伝えられたのが11月末、共通テストの支払いを済ませた後でした。職員さんも共通テスト申込の段階ではそのことを知らなかったのだと思います。それだけ大学受験、特に一般入試に挑む子は今までにいなかったのでしょう。社会福祉協議会には教育支援資金がありますが入学準備には使えても受験料の用途では受け付けられないと言われ、国の教育ローンは6等身以内に保証人がいないとダメだと言われました。受験期にここが1番大きな躓きだったと思います。ここまで絶望的状況なら今から就職に変えればもう少し落ち着いて新年度を迎えられるのかもしれない、と考えたりもしました。それでもここで進学を諦めるのはあまりに救われない気がして、必死に探してとあるNPO法人から8万円受験料として支援を頂きました。合わせて14万円。なんとか「共通テスト・共テ利用1校・一般受験3校」を出願。それでも周りと比べれば1人だけ圧倒的に少なくて、1枚に10校分の枠がある出願校を書く紙を周りは2枚3枚と貰う中私は1枚の上半分にも足らない枠で充分足りてしまうことが悲しかったし、受験後も「もっと出願できていたらな」と思いました。

 

②受験料は確保できても… 

 受験期に1番大変だったのが、四六時中お金のことを考えていたこと。奨学金の申請書一つ書くのにも何時間とかかります。名前を書けばいいだけじゃない、「高校生活について」「自己PR」「資金計画」「将来についての作文」などどれも推敲して労力と時間を費やして書いているのに倍率は優に10倍を超え落ちる確率の方が高い。藁にもすがる思いで送った先から数ヶ月後に届く不採用の通知に首を項垂れることが幾度もありました。「今まで祖父母からもらったお年玉を入れていた私名義の口座を渡して欲しいです」と母に頼んだこともあります。けれど返答は「私が貯めていたものなので進路を教えてくれない今渡すことはできません。」というもの。学校の昼休みに電話で問い合わせたり、考査前の自習時間に奨学金の申請書を書いたり。周りがギアを上げる中私だけあまりにも温度感が違って虚無感にずっと支配されていました。受験生に染まることも出来ず、かと言って就職に踏み切ることも出来ず、どこにも属せていない疎外感。周りに似たような人や相談できる相手がいないことは苦しかったです。

 

 令和元年度の高校卒業後の就職率は17.6%です。やはり世間一般との乖離の大きさを感じます。(ちなみに大学・短大への進学率は54.8%)モチベーションの差なんていうのもあると思います。社会的養護を受けている子が口を揃えて言うのが、「特にやりたいことないから就職する」です。私は初めてこの言葉を聞いた時とても驚きました。今までのコミュニティでは「特にやりたいことがないから大学行く」だったから。理由は同じなのに、選択が真反対になるのか…と。虐待や貧困の連鎖を防ぐためには教育が鍵を握っていると思います。奨学金や優先入試の制度も年々広がっている今、高校卒業後も進学する選択肢がポピュラーになればいいな、、と思う次第です。